税制は『今動け』、金利は『待て』
── 設備投資を借入・待機・リースで比べる
そして今年は、二つの力が逆方向に働いています。令和8年度税制改正大綱では、大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)が創設され、要件を満たせば税額控除7%(建物・建物附属設備・構築物は4%)または即時償却を選べます。中小企業経営強化税制も一部見直しのうえ適用期限が2年延長されましたが、デジタル化設備(C類型)は廃止され、対象範囲はむしろ狭まる見込みです。
制度は動けと言い、金利は待てと言う。この二つを別々に眺めているから、判断が止まります。同じ一枚に載せれば、答えは意外とあっさり出ます。
1. 制度と金利が逆を向いている ── 2026年の設備投資環境
まず、いま何が起きているかを整理します。税制側は、投資を前に倒させる方向に動きました。新設された投資促進税制は、要件を満たせば税額控除か即時償却を選べる仕組みで、利益が出ている年に投資すれば、その年の税負担を大きく動かせます。
一方で、中小企業経営強化税制はデジタル化設備(C類型)が廃止されました。ここは見落とされがちですが実務的には重要で、待っていると使えなくなる枠があるということです。制度は永続しません。
そして資金調達側は逆です。金利が上がる局面では、同じ金額を借りても総返済額が増えます。制度が背中を押し、金利が引き止める。どちらか一方だけを見て判断すると、必ず後悔します。
2. 判断を分ける3つの変数 ── 回収期間・金利・期限
設備投資の判断は、突き詰めると次の一行に収まります。
この回収期間が、借入期間より短いか長いか。これが最初の分岐です。回収期間が借入期間より長い設備は、返済が終わる前に投資額を回収できていないということで、資金繰りを圧迫します。逆に回収期間が明確に短ければ、多少金利が上がっても投資は成立します。
そのうえで金利です。0.25%の差が効くかどうかは、回収期間の長さで決まります。3年で回る投資なら金利差はほぼ誤差ですが、10年かかる投資なら効きます。金利を先に心配するのは順番が違う、というのが実務の感覚です。
3. 想定事例: 同じ設備で、動いた会社と待った会社
※ 以下は、実際に起こりやすい状況をもとに構成した想定事例です。
同業・同規模の2社が、同じ2,000万円の生産設備を検討した
どちらも年商5億円前後、直近は黒字。導入すれば夜間の無人稼働ができ、外注に出していた工程を内製化できる見込みでした。
待つこと自体が悪いのではありません。計算せずに待つことが、判断ではなく先送りになるという話です。
4. turn: 借入・待機・リースを一枚の表に載せる
迷いが消えないのは、三つの選択肢を別々の場面で考えているからです。同じ紙に並べます。
- ①初期支出と月々の負担: 借入なら頭金と毎月返済、リースなら月額。手元資金がいくら残るかを必ず併記する
- ②税務の扱い: 購入なら減価償却と、要件を満たせば税額控除や即時償却の対象になりうる。リースは契約形態によって扱いが変わる。ここは顧問税理士に確認する欄と割り切ってよい
- ③期限のあるもの: 制度の適用期限、補助金の公募時期、機械の納期。待つ選択肢のコストは、この欄に現れます
- ④やめやすさ: 事業が想定どおりにいかなかったとき、途中でやめられるか。リースの利点はここで、所有にこだわらない設備ほどリースの相対価値が上がる
実務上の目安を一つ挙げるなら、長く使い、稼働が読める中核設備は購入。技術の陳腐化が速い、または稼働が読みにくい設備はリース。そして回収期間が計算できないものは、まだ買わない。この三つで、ほとんどのケースは仕分けできます。
5. 学び: 迷ったら制度ではなく、回収期間で決める
税制優遇や補助金は強力ですが、判断の主役にしてはいけません。節税額が投資額を上回ることはないからです。制度に押されて必要のない設備を入れた会社は、税金は減っても、使わない機械の返済が残ります。
制度の正しい使い方は、やると決めた投資の実行時期を前に倒す根拠にすることです。順番はいつも同じで、①回収期間が成立するか → ②資金繰りが持つか → ③制度が使えるか。③から入ると失敗します。
私たちBEYONDは、9社の中小企業を自分たちで経営しています。設備を入れる判断も、返済に追われる感覚も、自分の会社の話として引き受けている当事者です。その実感として言えるのは、設備投資でいちばん多い失敗は、高い買い物をしたことではなく、回収の計算をしないまま雰囲気で決めたことだということ。逆に、数字が出ている投資は多少条件が悪くても回ります。
金利は上がりました。制度も動きました。どちらも自社では変えられません。変えられるのは、判断の順番だけです。
その設備投資、何年で回収できる計算になっていますか?
1分でできる財務体力チェック、もしくは無料ヒアリングから。借入・待機・リースのどれが自社に合うかを一緒に確認します。
6. BEYONDが伴走するときの動き方
BEYONDは、投資すべきかどうかを評論して終わりではありません。実際に数字が出て、金融機関と話ができ、実行時期が決まるところまで一緒に動きます。FLOWで伴走に入る場合、典型的にはこう進めます。
- 回収期間の試算(無料ヒアリング): その設備で増える粗利と減る費用を洗い出し、投資額を割って回収年数を出す
- 資金繰りへの影響確認: 毎月の返済額を資金繰り表に入れ、閑散期でも資金が持つかを確認する
- 三択の比較表づくり: 借入・待機・リースを同じ様式で並べ、判断の材料を1枚にまとめる
- 制度と時期の確認: 使えそうな税制や補助金の期限を洗い出し、顧問税理士と確認すべき論点を整理する
買うか待つかは、性格ではなく計算で決まります。計算さえ出れば、迷っている時間のほうがよほど高くつきます。