円ベースは3.0%下がり、
契約通貨ベースは1.0%だった
同じものの値段を二通りで測った結果です。差の2.0ポイントが、為替で動いた分。
この読み方を自社に当てると、どこが為替に触れているかが見えてきます。
1. 二つの指数の差が、為替の影響分
輸入物価指数は、二通りの数え方で公表されています。契約通貨ベースは、取引に使った通貨のままの値動き。円ベースは、それを円に換算した値動きです。
2026年8月の速報では、契約通貨ベースが前月比▲1.0%、円ベースが▲3.0%でした。現地の値段は1.0%下がり、円に換算すると3.0%下がった。
つまり差の2.0ポイントは、商品の値段ではなく円の価値が動いた分です。この期間は円高方向に動いたということになります。
なお同じ速報で、円ベースの前年比は+24.8%と高い水準が続いています。月ごとには下がっていても、一年前と比べればまだ高い。この二つは矛盾しません。
2. 輸入していない会社でも、為替に触れている
自社は国内からしか仕入れていない。だから為替は関係ない。これが最も多い誤解です。
国内の仕入先が輸入している場合、その影響は仕入価格に乗って回ってきます。一次は国内、二次が海外という構造は珍しくありません。
触れている場所は、だいたいこの四つに出ます。原材料、部品、燃料と電力、そして機械の部品や保守。
自社が直接輸入していないと、この影響は値上げの通知という形でしか見えません。だから突然に見えます。
3. 自社の『為替に触れている割合』を出す
やることは、仕入の内訳を二つに分けるだけです。
①直近一年の仕入を、取引先ごとに金額順で並べる。上から八割を占める先までで十分です。全部を調べる必要はありません。
②各先に一度だけ聞く。『この価格は、輸入の影響を受けますか』。多くの仕入先は答えてくれます。答えにくい場合は、過去の値上げ通知の理由書きを見れば書いてあることがあります。
③為替に連動する先の金額を合計し、仕入全体で割る。これが自社の為替に触れている割合です。
この数字を持っている中小企業は少なく、出してみると想像より高いか、想像より低いかのどちらかに振れます。どちらにしても、打ち手が変わります。
4. 割合によって、打ち手が変わる
出た割合で、やることが分かれます。
- 一割未満: 個別の対策は不要。値上げ通知が来たときに理由を確かめる運用だけ決める
- 一割から三割: 価格改定の条項を先に整える。原価の変動を反映できる形にしておく
- 三割以上: 仕入先の分散と、在庫の持ち方を見直す。為替の動きが利益に直結する水準
- 直接輸入している場合: 取引金融機関に為替予約などの仕組みと費用を確認する。仕組みごとに条件が異なる
順番として大事なのは、金融の手段より先に、価格の条項を整えることです。条項で動かせる範囲は費用がかからず、効き目も確実です。
なお、為替予約その他の取引にはそれぞれ異なる仕組みと費用があり、会計および税務の取扱いも含めて取引金融機関と顧問税理士への確認が前提です。
5. 見るのは水準ではなく、動いた幅
為替の話になると、水準の予想に向かいがちです。この先円安になるのか円高になるのか。
経営の判断で必要なのは、予想ではありません。どれだけ動いたら自社の利益がいくら動くかです。
割合が出ていれば、これは掛け算で出せます。仕入の三割が為替連動で、一割動いたら、仕入全体では3%の変動。粗利率が15%なら、利益の五分の一が動く計算になります。
この数字を持っていると、値上げ交渉の根拠にもなります。『為替が上がったので』ではなく、『仕入の三割が連動していて、そこが一割動いた』と言える。相手の社内でも通しやすい説明になります。
自社の仕入のうち、為替で動く割合は何割ですか?
1分でできる財務体力チェック、もしくは無料ヒアリングから。仕入の内訳から、為替に触れている部分を一緒に洗い出します。
6. BEYONDが伴走するときの動き方
BEYONDは、外から助言するコンサルではなく、複数の中小企業を自分たちで経営している集まりです。輸入に直接関わる商売も、国内だけで回している商売も社内にあります。
並べて分かったのは、為替の影響がいちばん見えていなかったのは、直接輸入していない会社だったということです。輸入している会社は数字を持っていました。持っていなかったのは、間接的に効いている側でした。
FLOWで伴走に入る場合、典型的にはこう進めます。
- 直近一年の仕入を金額順に並べる(無料ヒアリング): 上から八割を占める先までを対象にする
- 各先に一度だけ聞く: 輸入の影響を受けるかどうかを確認し、連動する金額を合計する
- 割合を出し、効く順を決める: 一割未満なら運用だけ、三割以上なら分散と在庫まで
- 価格改定の条項を先に整える: 金融の手段より前に、契約で動かせる範囲を広げる
いちばん抵抗が出るのは、仕入先に聞くことです。価格の内訳を聞くのは失礼ではないか、と心配される。実際にやってみると、聞かれた側も説明したいことが多い。値上げを通知する立場からすると、理由を理解してくれる取引先のほうが話が早いからです。
なお、為替に関わる取引の実行や会計・税務の取扱いについては取引金融機関および顧問税理士に必ずご確認ください。私たちが一緒にやるのは、その前段にある、自社のどこが為替に触れているかを数える作業です。