入金が遅れたら、
気まずさより先に動く
多くの中小企業が、ここで数日から数週間、様子を見ます。催促して関係が悪くなるほうが怖いからです。担当者は社長に相談しづらく、社長は先方の社長の顔が浮かぶ。気まずさが、そのまま資金繰りのリスクになっている状態です。
ところが2026年1月1日、下請法が改正され取適法(中小受託取引適正化法)として施行されたことで、前提が一つ変わりました。支払遅延を含む遵守事項の違反について、違反行為が既になくなっている場合でも、公正取引委員会が特に必要と認めるときは勧告できるようになったのです。
制度の側は、後から払えば済むという扱いをやめました。
1. 制度が変わった一点 ── 後から払えば済む、ではなくなった
改正前の条文は、受領拒否や支払遅延について、勧告の前にすでに違反行為が終了していれば勧告できないと読めるものでした。実務上、これは指摘されてから払えば済むという余地を残していました。
2026年1月の改正で、ここが変わりました。違反行為が既になくなっている場合でも、公正取引委員会が特に必要があると認めるときは勧告できる。勧告には違反内容や事業者名の公表が伴います。払えば消える、ではなくなったということです。
注意点として、この法律が対象とするのは委託取引であり、適用の有無は取引内容や当事者の規模によります。すべての売掛金に及ぶものではありません。ただし、制度が支払遅延を軽く扱わない方向へ動いたという事実は、対象かどうかにかかわらず、催促する側の心理的な後ろ盾になります。
2. 遅れた瞬間に、催促ではなく確認から入る
実務でつまずくのは、遅れを見つけた後の最初の一手です。多くの会社が催促から入ろうとして、言い方に悩み、結果として何日も動けません。
順番を変えます。最初は催促ではなく、事実確認です。
この形なら、担当者レベルで送れます。『先日お送りした請求書、社内で処理は進んでおりますでしょうか』。角が立たず、しかも相手が忘れていた場合はこれで解決します。遅延の何割かは、悪意でも資金難でもなく、単なる処理漏れです。
3. 三段階の型 ── 確認・催促・条件見直し
気まずさが判断を鈍らせるなら、判断を型にして個人から外すのが実務的です。期日からの経過日数で、やることを決めておきます。
- ①期日翌営業日 ── 確認: 担当者から事務連絡として送る。請求書の到達と処理状況の確認まで。この段階では催促の言葉を使わない
- ②1週間経過 ── 催促: 入金予定日を書面で確認する。メールで記録に残る形にし、いつまでに入金されるかを相手に言ってもらう。ここで初めて期限を切ります
- ③2週間経過 ── 上長へ引き上げ: 担当者同士から、責任者同士の話に切り替える。担当者に長く背負わせない。個人の関係で処理させると、遅延は必ず常態化します
- ④1か月経過 ── 取引条件の見直し: 遅延が繰り返されているなら、次回以降の与信と条件を見直す。前金、分割、上限額の設定。回収の話と、次の取引の話を分けて進めます
型にする最大の効用は、誰も個人の判断で遅らせなくなることです。『来週まで様子を見よう』が発生しません。しかも相手から見ても、この会社は仕組みで動いていると伝わる。それ自体が抑止になります。
4. 気まずさを個人に背負わせない仕掛け
それでも現場は気を遣います。だから言い出しやすくする仕掛けを先に用意しておきます。
一つ目、社内ルールとして先方に伝えておく。取引開始時や契約更新時に、『期日を過ぎた場合は翌営業日に確認のご連絡を差し上げます』と一言添える。事前に伝えてあれば、連絡は約束の履行になります。
二つ目、送る文面を用意しておく。確認・催促・引き上げの3段階それぞれの文面を、社内に置いておく。毎回文章を考えるから遅くなります。文面があれば、担当者は日付と金額を入れるだけです。
三つ目、期日超過を自動で見える形にする。売掛の一覧に期日超過日数の列を作り、毎週決まった曜日に全員で見る。個人が気づいて言い出す形にしないことが要点です。見える化されていれば、動くのは仕組みの側になります。
5. それでも回収できないときの順番
私たちBEYONDは、9社の中小企業を自分たちで経営しています。回収の場面は、どうしても出てきます。その経験から言えるのは、初動が早い案件ほど、関係を壊さずに終わるということです。
遅れて数日での確認は、相手にとっても助かることが多い。処理漏れなら、むしろ感謝されます。ところが1か月放置してから連絡すると、金額が積み上がっているぶん、話が重くなる。気まずさを避けて待った時間が、気まずさを増やしています。
それでも入金されない場合の順番は、①書面での支払催告、②取引の停止と与信の見直し、③専門家への相談です。ここから先は法的な論点が絡むので、弁護士等に相談してください。取引の内容によっては、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口も選択肢になります。
そして忘れてはいけないのが、回収と次の取引を分けて考えることです。過去分の回収を進めながら、次回以降は前金や上限設定にする。関係を続けるかどうかと、条件を変えるかどうかは別の判断です。混ぜると、どちらも決められなくなります。
制度は、遅れを軽く扱わない方向に動きました。あとは自社が、気まずさより先に動ける形を持っているかどうかです。
いま期日を過ぎている売掛金、何件ありますか?
1分でできる財務体力チェック、もしくは無料ヒアリングから。入金の遅れがどこで発生しているかを一緒に確認します。
6. BEYONDが伴走するときの動き方
BEYONDは、督促を代行する立場ではありません。遅延が起きても担当者が迷わず動けて、資金繰りに穴が開かない状態になるところまで一緒に整えます。FLOWで伴走に入る場合、典型的にはこう進めます。
- 現状の把握(無料ヒアリング): 売掛の一覧に期日超過の列を作り、どの取引先で何日の遅れが常態化しているかを洗い出す
- 三段階の型づくり: 経過日数ごとの担当と文面を決め、社内で共有できる形にする
- 与信と条件の再設計: 遅延が繰り返される先について、上限額・前金・分割の設定を検討する
- 資金繰りへの反映: 遅延を前提にした入金見込みに引き直し、資金繰り表を現実の形に合わせる
催促は、性格の問題ではなく設計の問題です。