補助金は後払い
── 採択を喜ぶ前に、立て替える期間を数える
申請した会社にとって、9月末は待ち遠しい日でしょう。ただ、ここで見落とされがちな事実があります。採択は、入金ではありません。
補助金は原則として精算払い、つまり後払いです。設備を買うのは自分の現金、戻ってくるのは半年から1年先。この距離を先に数えておかないと、採択されたのに資金繰りが苦しくなるという、笑えない事態が起きます。
1. 採択の日から、入金の日までにあるもの
採択と入金のあいだには、いくつもの工程があります。制度により細部は違いますが、大枠は共通しています。
採択 → 交付申請 → 交付決定 → 事業の実施 → 実績報告 → 確定検査 → 額の確定 → 請求 → 入金。
ここで押さえるべき点が二つあります。一つ目、事業を始めてよいのは交付決定の後だということ。採択されたからといって発注してしまうと、その経費が対象外になることがあります。採択から交付決定までにも時間がかかるので、スケジュールは想定より後ろにずれます。
二つ目、実績報告のあとに検査があること。書類の不備があれば差し戻され、そのぶん入金は遅れます。見積書、発注書、納品書、請求書、振込の控え、現物の写真。支払った証拠が一式そろって初めて、補助対象として認められます。
2. どの時点で、自社の現金が出ていくのか
資金繰りとして見るべきは、この一点です。支払いは事業実施の期間に発生し、入金はそのずっと後。
ここを取り違えている経営者は少なくありません。補助率2分の1だから半分用意すればいい、ではないのです。1,000万円の設備なら、1,000万円を先に払います。消費税分も自社負担です。そして数か月後に、補助分が振り込まれる。
さらに、満額が戻るとは限りません。確定検査で対象外と判断された経費があれば、その分は減額されます。入るはずの金額を全額あてにした資金繰りは、危ういということです。
3. 立て替え期間を数える、三つの数字
申請前に、次の三つを紙に書きます。難しい計算はありません。
①支払いが出ていく月と金額。設備の発注時期から、着手金・中間金・残金がいつ出るかを引き直す。分割で支払えるなら、それだけで負担の山が低くなります。
②実績報告を出せる見込みの月。事業完了から報告書作成までに、実務では数週間かかります。ここを楽観的に見積もると、全体が後ろにずれます。
③入金の見込み月。②から確定検査を経た後になります。制度や時期により幅がありますので、最も遅いケースで置くのが安全です。
この三つを月別に並べると、何か月間、いくらの現金が出たままになるかが出ます。これが立て替え期間です。ここが自社の手元資金で耐えられる範囲かどうか。耐えられないなら、申請そのものを見送る判断もあり得ます。
4. つなぐ方法は三つある
- ①自己資金で耐える: 最も安全ですが、手元資金が薄くなる期間が生まれます。その間に別の急な支出が起きても持ちこたえられるかを必ず確認する
- ②つなぎ融資を使う: 交付決定を受けた事業について、入金までの資金を金融機関から調達する方法です。交付決定通知を持って相談に行くのが基本で、採択前の相談では話が進みにくい。金利負担が発生する点も計算に入れる
- ③発注と支払いの時期を調整する: 意外に効くのがこれです。納入業者に支払時期の相談をする、分割にしてもらう、検収の時期をずらす。交渉一つで立て替え月数が短くなることがあります
制度によっては概算払いが認められる場合もありますが、可否や条件は制度ごとに異なります。使えるかどうかは、必ず事務局に確認してください。あるものとして計画に組み込むのは危険です。
5. 申請の前に決めておく四つ
私たちBEYONDは、9社の中小企業を自分たちで経営しています。補助金は使いますし、有効な制度だと考えています。ただし補助金があるから投資する、という順番だけは避けてきました。理由は単純で、補助金の有無で採算が変わる投資は、そもそも筋が悪いからです。
申請前に、次の四つを決めておくと迷いません。
①補助金がゼロでもやるかどうか。ここが最初の関門です。やらないなら、その投資は補助金に乗せられて動かされているということ。採択されなかった時に事業計画ごと消えるなら、危うい。
②立て替え期間の資金の出どころ。自己資金なのか、つなぎ融資なのか。融資に頼るなら、採択前の段階で取引銀行に一報を入れておく。交付決定後に初めて相談するより、話がずっと早くなります。
③減額されても耐えられるか。確定検査で一部が対象外になる前提で、入金額を少なめに見た資金繰りを引いておく。満額前提の計画は、余裕がないという意味です。
④事務作業を誰がやるか。実績報告の書類集めは、想像よりずっと重い作業です。担当者の名前を先に決めておかないと、事業が終わった後で誰もやらない状態になります。報告が遅れれば、入金も遅れます。
補助金は、うまく使えば投資の負担を確実に軽くします。ただし軽くなるのは後からで、先に重くなる。この順番さえ押さえておけば、採択の知らせを素直に喜べます。
採択されたら、いくらを何か月立て替えることになりますか?
1分でできる財務体力チェック、もしくは無料ヒアリングから。補助金を使う前提の資金繰りを一緒に組み立てます。
6. BEYONDが伴走するときの動き方
BEYONDは、申請書の作成を代行して終わりではありません。採択された後、立て替え期間を無事に越えて、事業が回り始めるところまで一緒に動きます。FLOWで伴走に入る場合、典型的にはこう進めます。
- 投資判断の確認(無料ヒアリング): 補助金がなくても成立する投資かどうかを、回収期間と資金繰りの両面から確認する
- 立て替え計画づくり: 支払月・実績報告月・入金見込月を並べ、何か月いくらが出たままになるかを月別に出す
- 資金の手当て: 自己資金で耐えるか、つなぎを用意するかを決め、必要なら金融機関への相談時期を設計する
- 報告体制の準備: 証憑の集め方と担当を先に決め、事業完了後に止まらない形にする
先に重くなることを知っていれば、補助金は怖くありません。