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#財務・資金繰り #意思決定 #数字・見える化
FINANCIAL COLUMN · 2026.09.13 · BEYOND Holdings 編集部

8月の倒産830件、負債総額は26.5%増
── 焦げ付きに備える与信の実務

東京商工リサーチによると、2026年8月の全国企業倒産(負債1,000万円以上)は830件。前年同月比3.1%増で、3か月連続の増加です。8月としては2012年の967件に次ぐ、14年ぶりの高い水準でした。
もっと注目したいのは負債総額のほうです。1,447億2,800万円で、前年同月比26.5%増6か月連続で前年を上回っています
件数の伸びより、一件あたりが大きくなっている。取引先が倒れる確率が上がるということは、自社の売掛金が焦げ付く確率も上がるということです。そして与信は、取引が始まる前にしかかけられません
CONTENTS
  1. 件数より、一件あたりの大きさを見る
  2. 与信の基本は、相手を審査することではない
  3. 上限額の決め方 ── 三つの数字から
  4. 兆候は、決算書より先に現れる
  5. 焦げついたときのために、先に持っておくもの
  6. BEYONDが伴走するときの動き方

1. 件数より、一件あたりの大きさを見る

件数が3.1%増に対して、負債総額は26.5%増。この開きが意味しているのは、規模の大きい倒産が増えているということです。

中小企業の現場では、取引先が大きいほど安心という感覚が根強くあります。長年続いている会社、名前の通った会社、上場企業の関連会社。ところが負債総額の伸びは、その感覚が当てにならない局面が来ていることを示しています。

そして、中小企業にとっての本当のリスクは、取引先の倒産そのものではありません。一社への依存です。売上の3割を占める先が飛べば、売掛金の焦げ付きに加えて、翌月からの売上がまるごと消えます。回収の問題と、事業の問題が同時に来る。ここが最も危ない形です。

2. 与信の基本は、相手を審査することではない

与信管理と聞くと、相手の財務内容を調べることだと思われがちです。ところが中小企業に、取引先の内情を十分に調べる手段はほとんどありません。決算書を出してもらえる相手も限られます。

だから、順番を変えます。相手を審査するのではなく、自社が許容できる上限を先に決めます。これなら相手の情報がなくてもできます。

KEY POINT
与信限度額 = その取引先が飛んでも、自社が支払いを続けられる残高
相手を評価するのではなく、自社が耐えられる線を先に引く

この置き方の利点は、断る理由が自社の側にあることです。『御社の信用に問題があるので』とは言えませんが、『当社の社内基準で、この金額を超える残高は持てないことになっています』なら言えます。基準として文書にしておけば、担当者でも断れます

3. 上限額の決め方 ── 三つの数字から

難しい計算は要りません。次の三つを並べます。

この三つから、取引先ごとの上限を決めます

運用は単純にします。新規の取引先は小さい上限から始め、支払いの実績が積み上がったら段階的に上げる。実績のない相手に大きな枠を与えないという、それだけのことです。そして一度上げた枠も、支払いが一度でも遅れたら戻す。ここを決めておかないと、枠は上がる一方になります。

4. 兆候は、決算書より先に現れる

決算書が手に入る頃には、たいてい手遅れです。実際に先に現れるのは、日々の取引の中の変化です。

この五つが重なったら、枠を戻す判断をします

最後の二つは、現場に出ている自社の社員にしか気づけません。だから、気づいたことを上げる経路を先に作っておく必要があります。『取引先の様子が変だと思ったら誰に言うか』を決めておくだけで構いません。多くの会社で、この情報は現場の雑談で止まっています

5. 焦げついたときのために、先に持っておくもの

回収の場面で効くのは、取引が正常だったときに揃えた書類です。注文書、納品書、検収書、そして取引基本契約書。請求の根拠になるものが揃っているかどうかで、その後の選択肢が変わります

契約書については、一度だけ確認しておきたい点があります。期限の利益喪失の条項があるか納品物の所有権がいつ移る取り決めになっているか。この二つは、平時には一度も使いませんが、必要になったときには内容を変えられません。

取引信用保険やファクタリングといった手段もあります。いずれもコストと引き換えなので、依存度の高い取引先が一社ある場合に絞って検討するのが現実的です。

そして、実際に回収の局面に入ったら、自社で判断しないでください。法的手続きは弁護士、貸倒引当金や貸倒損失の会計・税務上の取扱いは顧問税理士に確認する。ここを自己流でやると、取れるものも取れなくなります

一番大きい取引先が飛んだら、何か月持ちますか?

1分でできる財務体力チェック、もしくは無料ヒアリングから。取引先ごとの与信限度額を一緒に決めます。

6. BEYONDが伴走するときの動き方

BEYONDは、9社の中小企業を自分たちで経営しています。取引先が飛んで売掛金が消えた経験も、他社が絞った分の発注が急に回ってきた経験もあります。FLOWで伴走に入る場合、典型的にはこう進めます。

与信は、疑うための作業ではありません。長く付き合うために、耐えられる線を先に決めておく作業です。線があるから、多少のことでは関係を切らずに済みます。