頼まれるたびに二日かけて作っていた
資料を、二枚に固定した(想定事例)
しかも毎回、形が違う。前回と並べて比べられないので、説明も毎回ゼロからになります。
重いのは量ではありません。毎回ゼロから組んでいることです。以下はそれを変えた想定事例です。
1. 【before】頼まれるたびに、二日かかっていた
従業員26名の建設業。借入は三行、残高は合わせて一億円台です。
年に数回、銀行から資料を求められます。試算表、受注の状況、資金の見通し。そのたびに経理の担当者が二日かけて作っていました。
二日かかる理由は、量ではありませんでした。前回作ったものが、どこにどの形で残っているか分からない。だから毎回、数字を集め直して表を組み直していました。
そして出す形も毎回違う。頼まれ方が違うからです。『直近の試算表を』『来期の見通しを』。その都度の注文に合わせて、違う紙を作っていました。
2. 毎回違う形で出すと、何が起きるか
困るのは作る側だけではありませんでした。受け取る側も比べられません。
前回と項目の並びが違えば、増えたのか減ったのかが一目で分かりません。確かめるために質問が来て、経理がまた調べる。やりとりが一往復増えます。
もう一つ起きていたのが、説明が毎回ゼロからになることです。形が同じなら『前回と比べてここが動いた理由は』という話から始められる。形が違うと、まず紙の読み方の説明から入ることになります。
社長はこれを、担当者の力量の問題だと思っていました。実際には様式が決まっていないことの問題でした。
3. 【turn】二枚に固定して、求められる前に渡した
変えたことは二つです。
一つ目は、出す紙を二枚に固定したこと。中身を毎回同じ並びにして、数字だけを入れ替える形にしました。
二つ目は、求められる前に渡すことにしたこと。頼まれてから作るのをやめ、決まった時期に自分から持っていくようにしました。
二枚にした理由は、作り続けられる量だからです。三枚、四枚にすると数か月で止まります。続く量に抑えることが、精度より先に効きました。
- 一枚目: 直近の試算表の要点 ── 売上・粗利・営業利益を前年同月と並べ、差が出た項目に一行の理由を添える
- 二枚目: 向こう6か月の資金の見通し ── 入金・支払・返済の予定と、月末の残高見込み
- 並びは変えない ── 項目の順番を固定し、該当がない月は空欄のまま残す
- 作る人を一人に決める ── 誰が作っても同じ形になるよう、前回のものを上書きして使う
4. 型に入れる中身を決める
何を載せるかは、銀行の関心から逆算しました。要点は三つです。
①前年や前月と並べて置く。単月の数字だけでは判断されません。並べて初めて、傾きが見えます。
②差が出た項目に、一行の理由を書く。これがいちばん効きました。数字だけを渡すと質問が来ますが、理由が一行あると質問の数が減ります。書けない項目は、自社でも把握できていない項目です。
③悪い数字を隠さない。良い月だけ持っていくと、持っていかない月の意味が重くなります。毎月同じ形で出すなら、悪い月も同じ形で出す。これが前提でした。
なお、提出する資料の様式や求められる内容は金融機関や取引の状況によって異なります。試算表の作成や開示の扱いについては、顧問税理士および取引金融機関への確認が前提です。
5. 渡す頻度と、渡し方を決める
頻度は四半期に一度にしました。毎月だと作る側が続かず、年一度だと間が空きすぎます。
渡し方も決めました。先に送っておいて、会うときに口で補う。その場で初めて渡すと、相手は読むことに時間を使います。先に手元にあれば、会う時間を質問と相談に使えます。
半年後、資料づくりにかかる時間は二日から数時間になりました。前回の紙を上書きするだけだからです。
効き目として大きかったのは時間ではありませんでした。頼まれる回数が減ったことです。定期的に同じ形で届いていれば、追加で求める必要がなくなります。
前回銀行に出した資料は、いま同じ形で作れますか?
1分でできる財務体力チェック、もしくは無料ヒアリングから。いま出している資料の中身と、型にできる部分を一緒に洗い出します。
6. BEYONDが伴走するときの動き方
BEYONDは、外から助言するコンサルではなく、複数の中小企業を自分たちで経営している集まりです。銀行に出す資料は、各社で作ってきました。
並べて分かったのは、資料の出来より、同じ形で続いているかどうかで相手の反応が違うということです。凝った資料を一度出した会社より、簡素な二枚を四半期ごとに出し続けた会社のほうが、相談のときの話が早かった。
FLOWで伴走に入る場合、典型的にはこう進めます。
- いま出している資料を全部並べる(無料ヒアリング): 過去に出した紙を集め、重なっている項目を抜き出す
- 二枚の型を作る: 項目の並びを決め、前年比と理由欄を入れる
- 作る人と上書きの手順を決める: 誰が作っても同じ形になる状態にする
- 渡す時期を四半期で固定する: 決算月から逆算して、カレンダーに入れる
いちばん抵抗が出るのは、悪い月も同じ形で出すことです。気持ちは分かります。ただ、出す月を選び始めた時点で、出さない月の意味が相手に伝わります。選ばずに出し続けるほうが、結果として説明が楽になりました。
なお、提出資料の内容や試算表の扱いについては顧問税理士および取引金融機関に必ずご確認ください。私たちが一緒にやるのは、その前段にある、毎回ゼロから組む状態をなくす作業です。