設備投資が増えている今こそ、
償却年数と返済期間のずれを見る
設備を買う会社が増えるということは、償却と返済を同時に抱える会社が増えるということです。
そして中小企業の資金繰りを静かに削っているのが、償却年数と返済期間のずれです。
1. 投資は増えている。問題は買ったあとの数年
公表された数字は全産業の集計であり、そのまま自社に当てはまるものではありません。それでも読み取れる傾向はあります。設備投資は増加基調にある。老朽化した機械の更新、省力化投資、システムの入れ替え。人が採れない以上、投資でしのぐ会社が増えています。
そして投資の判断は、たいてい買うかどうかの時点で完結します。回収期間を計算し、補助金を調べ、金利を比べる。ここまではよく議論されます。
ところが資金繰りが苦しくなるのは、買った翌期から数年後です。そのころには投資の判断は過去の話になっていて、毎月の現金が減っている理由が誰にも説明できなくなっています。
2. 利益と現金がずれる、いちばん単純な理由
設備を買った年、現金は全額出ていきます。ところが損益計算書には、その年の償却費しか載りません。だから買った年は、現金の減り方に比べて利益が大きく見えます。
逆に、翌年以降は現金が出ていかないのに償却費だけが計上されます。今度は利益が実態より小さく見える。ここまでは、多くの社長がご存じの話です。
問題はその先です。借入で買った場合、返済という現金の流出が別に走っています。そして返済のうち元本部分は、費用になりません。
この式を見れば、利益が出ているのに金がない会社がどういう状態かが分かります。元本返済額が、償却費を上回っているのです。
3. 償却7年・返済5年で、毎年いくら消えるか
仮設例で考えます。3,500万円の設備を全額借入で購入。耐用年数は7年、借入の返済期間は5年としましょう。
償却費は、単純に均等で割れば年500万円。一方、元本返済は年700万円です。差は年200万円。この200万円は、利益から税金を払ったあとの現金で埋めるしかありません。
つまり、この設備を持っているだけで、毎年200万円ぶんの税引後利益が必要になります。税負担を考えれば、必要な税引前利益はさらに大きくなります。
そして5年目が終わると返済は消え、6年目・7年目は償却費だけが残ります。最後の2年は急に楽になる。この山と谷が、設備投資をした会社の資金繰りの正体です。
- 短期の運転資金で設備を買った: 返済1〜3年に対し、償却は7年以上になることがある
- 中古資産を買った: 耐用年数が短くなる一方、借入は長めに組んでいる逆パターンもある
- 建物や構築物を借入で建てた: 償却期間が長く、返済期間との差が最も開きやすい
- 特別償却や即時償却を使った: 初年度に償却が寄るぶん、翌年以降は償却費が細る
四つ目は見落とされがちです。制度を使って早く償却するほど、翌年以降の償却費は小さくなります。節税にはなっても、返済とのバランスという意味では、ずれを大きくする方向に働くことがあります。
4. 自社の危険度を、一分で確かめる
必要なのは二つの書類だけです。返済予定表と決算書の減価償却費。
手順は三つ。①今期の元本返済額の合計を出す。利息は含めません。②今期の減価償却費を出す。③引き算する。
元本返済額が償却費より大きければ、その差額は毎年、利益から持ち出している金額です。この金額を税引後利益が上回っていなければ、黒字のまま現金が減り続けます。
そして、この計算を今期だけでなく3年先まで並べてください。返済予定表があれば来期・再来期の元本返済額はすぐ分かります。償却費のほうは、既存資産の償却が終わる時期を見れば概算できます。差額がいつ最大になるかが分かれば、そこに向けて手を打てます。
5. 借りるときに、ずらさないための三つ
買ったあとに直すのは難しい。だから借りる前に決めておくほうが早いです。
一つ目、返済期間を耐用年数に近づけて交渉する。金融機関は資産の耐用年数を見ています。7年使うものを5年で返す条件になっているなら、その理由を確認する。多くの場合、単に慣例でそうなっているだけです。
二つ目、据置期間を安易に使わない。据置は最初の資金繰りを楽にしますが、そのぶん後半の元本返済が重くなります。ずれを後ろに押し込んでいるだけだと理解して使う必要があります。
三つ目、制度による前倒し償却を使うかどうかを、返済計画と一緒に判断する。税負担が減る年と、現金が苦しくなる年が別になるためです。節税の判断と資金繰りの判断を、同じ紙の上で並べる。適用の可否と有利不利は、必ず顧問税理士に確認してください。
三つとも、買う前なら選べます。買ったあとに選べるのは、借り換えと条件変更だけです。
その設備、償却年数と返済期間は揃っていますか?
1分でできる財務体力チェック、もしくは無料ヒアリングから。直近3期の返済予定表と固定資産台帳を並べて、ずれの大きさを一緒に出します。
6. BEYONDが伴走するときの動き方
BEYONDは、複数の中小企業を自分たちで経営している集まりです。設備を持つ会社も、持たない会社もあります。同じ利益額でも、償却と返済の組み合わせ次第で手元の苦しさがまったく違うことを、実際に経験しています。
FLOWで伴走に入る場合、典型的にはこう進めます。
- 返済予定表と固定資産台帳を並べる(無料ヒアリング): 元本返済額と償却費の差を、今期から3期先まで一枚に出す
- 差額が最大になる年を特定する: その年に必要な税引後利益を逆算し、達成可能かを見る
- 条件変更の余地を洗う: 返済期間の延長、借り換え、複数本の借入の組み替え
- 次の投資の前提を決めておく: 耐用年数と返済期間を揃える、を社内の原則にする
もっとも効くのは、四つ目です。一度でも差額の計算をした会社は、次の投資のときに必ず返済期間を確認するようになります。仕組みが分かってしまえば、その後は自社だけで判断できる話だからです。
なお、償却方法や耐用年数の判定、特例の適用可否は必ず顧問税理士にご確認ください。私たちが一緒にやるのは、その数字を資金繰りの判断に翻訳するところです。