◀ BEYOND PLAYBOOK ← トップへ戻る
#財務・資金繰り #意思決定 #補助金・制度
FINANCIAL COLUMN · 2026.08.14 · BEYOND Holdings 編集部

企業価値担保権が動き出した
── 経営者保証を外すために、いま揃える条件

2026年5月25日、事業性融資推進法が施行されました
目的ははっきりしています。不動産担保や経営者保証によらず、事業の実態や将来性に着目した融資を受けやすくすること。この法律で新たに創設されたのが企業価値担保権で、将来のキャッシュフローを含む事業全体の価値を担保として扱います。そして重要なのは、企業価値担保権が設定されている場合には経営者保証の利用が制限されるという点です。
制度は明確に、保証を外す方向へ動いています。ただし制度が変わったことと、自社の保証が外れることは別の話です。ここに実務の距離があります。
CONTENTS
  1. 制度は動いた ── 事業性融資推進法と企業価値担保権
  2. それでも、明日から外れるわけではない理由
  3. ガイドラインが見ているのは、3つの状態
  4. 想定事例: 同じ黒字で、外せた会社と外せなかった会社
  5. turn: 外す交渉ではなく、外れる状態を作る
  6. BEYONDが伴走するときの動き方

1. 制度は動いた ── 事業性融資推進法と企業価値担保権

これまで中小企業の融資は、不動産担保と経営者保証という二つの支えに依存してきました。土地を持たない事業者や、これから伸びる事業ほど、この枠組みでは評価されにくい。事業性融資推進法は、そこに新しい選択肢を加えるものです。

企業価値担保権は、個別の資産ではなく、将来キャッシュフローを含む事業全体の価値を担保として扱います。信託会社等が担保権者となる仕組みで、貸し手側は銀行に限られません。そして企業価値担保権が設定されている場合には、経営者保証の利用が制限されます。制度の設計思想として、事業を評価するなら、経営者個人に背負わせる必要はないという考え方が明確に置かれています。

2. それでも、明日から外れるわけではない理由

ここを冷静に見ておく必要があります。新しい制度が使えるようになったことと、いま借りている自社の保証が外れることは、まったく別の話です。

理由は単純で、既存の借入には既存の契約があるからです。制度の変更は、すでに結んだ保証契約を自動的に解除しません。外すには、金融機関との個別の話し合いが必要になります。そして金融機関が判断する材料は、新制度ができた後も基本的には変わっていません。この会社は、経営者個人の保証がなくても大丈夫か。この一点です。

つまり実務として意味があるのは、制度を待つことではなく、外れる条件を自社側で満たしにいくことです。追い風は吹いています。追い風の中で、こちらが帆を張っているかどうかが問われます。

3. ガイドラインが見ているのは、3つの状態

判断の物差しになるのが、2013年12月に策定され2014年2月から適用されている経営者保証に関するガイドラインです。求めているのは、次の3つの状態です。

KEY POINT
①法人と経営者の区分・分離 ②財務基盤の強化 ③適時適切な情報開示
この3つは交渉のテクニックではなく、会社の状態そのもの。満たしていれば説明でき、満たしていなければ言葉を尽くしても通らない

注意点として、ガイドラインは法的拘束力を持つものではありません。満たせば必ず外れると約束されたものではなく、あくまで判断の共通言語です。ただし逆に言えば、金融機関が何を見ているかが公開されているということでもあります。見られる項目が分かっているのだから、そこを整えるのが最短です。

4. 想定事例: 同じ黒字で、外せた会社と外せなかった会社

※ 以下は、実際に起こりやすい状況をもとに構成した想定事例です。

SIMULATION

年商3億円前後・借入6,000万円・直近3期黒字。決算書だけ見ればほぼ同じ2社

C社: 社長個人名義の車を会社の経費で維持し、社長への貸付金が決算書に数百万円計上されたまま。本社の土地は社長個人の所有で、会社から賃料を払っているが契約書がない。試算表は年に一度、決算のときだけ。
D社: 3年前に社長貸付を精算し、個人所有の不動産は賃貸借契約書を交わして相場賃料に。四半期ごとに試算表と資金繰り表を銀行へ持参している。自己資本比率は30%台。
結果: 借換えの際、D社は保証の解除について前向きな回答を得られた一方、C社はまず貸付金の整理からと言われて話が進まなかった。決算の数字はほぼ同じでも、ガイドラインの3項目で見ると状態がまるで違った

C社の社長に悪意はありません。中小企業では会社と個人が混ざるのが自然で、長年それで回ってきた。ただ、混ざっている限り『経営者個人が保証しなくても大丈夫』とは言えないのです。

5. turn: 外す交渉ではなく、外れる状態を作る

やることは、3項目をそれぞれ具体的な作業に落とすだけです。

今期から着手できる4つ

私たちBEYONDは、9社の中小企業を自分たちで経営しています。経営者保証の重さも、それを外したいという気持ちも、自分の会社の話として引き受けている当事者です。その実感として言えるのは、保証は交渉で外すものではなく、外れる状態になったときに外れるということ。

そしてこの3項目を整えることの本当の価値は、保証が外れることではありません。会社と個人が分離され、財務基盤が厚く、数字が四半期ごとに見えている会社は、そもそも事業として強い。承継のときも、M&Aのときも、金利交渉のときも、同じ状態が効きます。保証の解除は、その副産物として付いてきます。

制度は2026年5月に一歩進みました。追い風が吹いているうちに、帆を張っておく。それが今期やるべきことです。

いま保証を外す相談をしたら、何と言われそうですか?

1分でできる財務体力チェック、もしくは無料ヒアリングから。保証を外すために足りていない条件を一緒に確認します。

6. BEYONDが伴走するときの動き方

BEYONDは、制度を解説して終わりではありません。実際に決算書から混在が消え、開示が習慣として回り、金融機関と保証の話ができる状態になるところまで一緒に動きます。FLOWで伴走に入る場合、典型的にはこう進めます。

制度は変わりました。あとは、自社の状態を制度に追いつかせるだけです