新リース会計基準は2027年4月から
── リースか購入か、中小企業は何で決めるか
ただし、金融商品取引法の適用を受けず、会計監査人も置いていない非上場の中小企業は、強制適用の対象外です。多くの会社にとって、明日から帳簿が変わるわけではありません。
それでもこの改正は、リースか購入かを決め直す良い機会になります。判断の決め手は会計基準ではなく、手元資金・損金算入のタイミング・所有権と出口の三点だからです。
1. 何が変わるのか ── 借手のリースは原則オンバランスへ
これまでの実務では、借手のリースは二本立てでした。ファイナンス・リースは資産として計上し、オペレーティング・リースは支払ったリース料を費用として処理する。後者は、貸借対照表に出てきません。
新基準では、この区分がなくなります。借手は原則として、使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上する。実際に借りて使っている設備や不動産が、資産と負債の両方に見えるようになります。狙いは、財務情報の透明性を高め、国際的な比較可能性を確保することにあります。
数字の見え方は変わります。総資産が増え、負債も増えるため、自己資本比率は下がる方向に動きます。損益計算書でも、これまで一本だった支払リース料が、減価償却費と支払利息に分かれます。会社の実態は何も変わっていないのに、指標だけが動く——ここが、この改正の分かりにくいところです。
2. 多くの中小企業は、強制適用の対象外
まず確認すべきは、自社が強制適用の対象なのかどうかです。
上場しておらず、会計監査人も設置していない中小企業は、これまでどおりの処理を続けられます。この点が伝わらないまま『2027年から全部オンバランスになる』という話だけが広まると、必要のない準備に時間を使うことになります。
まず顧問税理士に、うちは強制適用の対象かどうかを一言で確認してください。多くの会社は、そこで話が終わります。
3. それでも効いてくる、二つの経路
対象外だからといって、無関係とは限りません。効いてくる経路が二つあります。
① 取引先やグループの側から
上場企業とその連結子会社は適用されます。親会社の連結に入っている会社は、連結決算のためにリース情報の提出を求められる可能性があります。上場企業と継続的に取引がある場合も、相手方が自社の財務指標の見え方を気にして、契約の形を変えてくることがあります。
② 会計と税務のズレ
適用する会社では、もう一つ厄介な点があります。オペレーティング・リースは、税務上は従来どおり賃貸借処理で、支払リース料を損金の額に算入する扱いとされています。つまり会計上はオンバランス、税務上は賃貸借。両者に差が生じ、税務調整が必要になります。
これは適用対象の会社の実務論ですが、対象外の中小企業にとっても意味があります。会計上の見え方と、税金の計算は別物である——リースか購入かを考えるときに、ここを混ぜないことが出発点になります。
4. 判断は基準ではなく、三つの数字で決める
では、何で決めるか。順番はこうです。
①手元資金への当たり方。購入は初期に大きく出ます。リースは平準化されます。同じ設備でも、手元資金が薄い局面では、総額が多少高くてもリースのほうが安全な場合がある。逆に手元が厚ければ、総額の安いほうを選べます。金額の大小ではなく、自社の必要な手元資金を割り込まないかで見ます。
②損金算入のタイミング。購入は減価償却として耐用年数にわたって費用化されます。リースはリース料が期間にわたって費用になります。どちらが有利かは、その年の利益の出方によって変わります。ここで注意したいのは、節税になるからという理由で設備の形を決めるのは順序が逆だということです。使うかどうかが先、税の効き方は後です。
③所有権と出口。使い終わったときにどうなるか。売れるのか、返すのか、撤去費用は誰が持つのか。中古市場のある資産(車両、建設機械など)と、ない資産(専用機、造作、什器)で答えは変わります。売れる資産なら購入の出口は現金化できますが、売れない資産の購入は、最後に処分費が残ります。
5. リースと購入を、同じ土俵に載せて比べる
比較表を作るときの手順です。難しい計算は要りません。
- ①総額を出す: リースは月額×回数に、満了時の再リース料や買取額を足す。購入は本体価格に据付費と、借入するなら金利を足す
- ②期間をそろえる: 5年リースと、10年使うつもりの購入を並べない。実際に使う期間で割って、年あたりに直す
- ③出口を書く: 満了時に返すのか買い取るのか。購入なら、売却できる見込み額と撤去費用まで書く
- ④現金の出方を月次で並べる: 総額が同じでも、資金繰りへの当たり方はまったく違います。12か月の現金流出を並べて見る
そのうえでの判断はこうです。総額が近いなら、手元資金の厚みで決める。手元が薄ければリース、厚ければ購入で構いません。総額に差があるなら、その差が出口の柔軟性に見合うかを問う。リースが高いのは、途中で返せることや、陳腐化の危険を貸手が引き受けることの対価です。その柔軟性が要らない設備なら、差額は払い損になります。
もう一点。すでに走っているリース契約の一覧を、この機会に作ってください。月額、残り回数、満了時の扱い。この三列だけで構いません。満了時にどうなるかを把握していない契約が、たいてい一つか二つ出てきます。自動的に再リースへ移行して、要らない設備の支払いが続いていることもあります。
そのリース契約、満了時にどうなるか把握していますか?
1分でできる財務体力チェック、もしくは無料ヒアリングから。リースと購入の比較表を一緒に作ります。
6. BEYONDが伴走するときの動き方
BEYONDは、9社の中小企業を自分たちで経営しています。設備をリースで入れたことも、購入したことも、判断を間違えたこともあります。FLOWで伴走に入る場合、典型的にはこう進めます。
- 適用対象かどうかの確認: 顧問税理士と一緒に、自社が強制適用の対象かを最初に切り分ける
- 既存リース契約の一覧化: 月額・残回数・満了時の扱いを三列で並べ、不要な自動更新を止める
- 比較表づくり: 総額・使う期間・出口・月次の現金流出を、同じ形式でそろえる
- 手元資金との突き合わせ: 初期支出が、自社の必要な手元資金を割り込まないかを確認する
会計基準がどう変わるかより、その設備を何年使い、最後にどうするかのほうが先です。制度の話を、判断の順番を見直すきっかけとして使ってください。