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#財務・資金繰り #意思決定 #数字・見える化
FINANCIAL COLUMN · 2026.08.17 · BEYOND Holdings 編集部

決算書の『社長への貸付金』は、
いくらから信用を削るのか

決算書の資産の部に、社長への貸付金仮払金が数百万円。中小企業では珍しくない光景です。
多くの社長は、こう考えています。資産に載っているのだから、マイナスではない。帳簿の上ではそのとおりです。ところが金融機関がこの会社を評価するときには、その金額が資産として数えられないことが少なくありません。資産から外れれば、自己資本はその分だけ目減りします。
つまり決算書の見た目より、実質的な財務体質は弱く判定されている可能性がある。しかも影響は融資だけにとどまりません。
CONTENTS
  1. なぜ資産に載っているのに、資産として見てもらえないのか
  2. 融資・税務・相続、三つの面で重さがある
  3. 想定事例: 同じ利益なのに、借換えで差がついた2社
  4. 金額の大小より、増え続けているかどうか
  5. 今期から着手できる4つ
  6. BEYONDが伴走するときの動き方

1. なぜ資産に載っているのに、資産として見てもらえないのか

金融機関は、決算書をそのまま受け取りません。実態に近い姿へ引き直してから評価します。このとき基準になるのは、その資産が本当に現金化できるかという一点です。

社長への貸付金は、この基準で見ると分が悪い。返済の期限も、返済の原資も、決まっていないことが多いからです。取引先への売掛金なら期日があり、回収できなければ督促できる。ところが社長への貸付金は、督促する相手が会社の代表者本人です。回収を強制する仕組みが会社の中に存在しない。だから評価の場面では、資産から外して考えられやすくなります。

外れた分は、そのまま自己資本から引かれます。自己資本比率も、実質的な純資産も下がる。決算書上は黒字で自己資本もあるはずなのに、融資の話になると反応が鈍い。その原因がここにあることは、実務では珍しくありません。

2. 融資・税務・相続、三つの面で重さがある

影響は融資の場面だけではありません。

KEY POINT
①融資評価で資産から外れる ②無利息なら税務上の論点になる ③相続で返済義務が引き継がれる
残高が同じでも、放置した年数が長いほど三つの重さが同時に効いてくる

税務の面。法人が役員に金銭を貸し付けている場合、無利息または通常より低い利率であれば、原則としてその差額が役員に対する経済的利益として給与課税の対象になります。災害や疾病等でやむを得ない場合や少額の場合など、課税しない取扱いが定められた例外もありますが、放置していれば毎期この論点が付いて回ることに変わりはありません。適用の判断は個別事情によるため、必ず顧問税理士に確認してください。

相続の面。社長に相続が発生すると、会社から社長への貸付金は返済義務として相続人に引き継がれます。会社側から見れば債権が残ったままで、相続人側から見れば突然の債務です。承継の場面でこれが表面化すると、話は一気に難しくなります。本人が元気なうちにしか、きれいに片付けられません

そして返すのが重い。会社への返済原資は、多くの場合、役員報酬です。所得税と社会保険料を負担した後の手取りから返すことになるため、額面よりずっと大きな金額を稼がないと減りません。だからこそ、早く着手した会社ほど楽に終わります。

3. 想定事例: 同じ利益なのに、借換えで差がついた2社

※ 以下は、実際に起こりやすい状況をもとに構成した想定事例です。

SIMULATION

年商2億円台・直近3期黒字・自己資本3,000万円。決算書の利益はほぼ同じ2社

E社: 資産の部に社長への貸付金1,200万円と仮払金180万円。発生は10年以上前からで、内訳を説明できる人が社内にいない。毎期少しずつ増えている。
F社: 5年前に同様の残高が800万円あったが、返済計画を書面にし、役員報酬から毎月一定額を返済。現在の残高はゼロ。経費精算は法人カードに一本化している。
結果: 借換えの相談で、F社は金利と期間の条件について具体的な話に進んだ一方、E社はまず貸付金の内訳と返済の見通しを説明してほしいと言われ、そこで止まった。自己資本3,000万円から1,380万円が引かれると、実質的な自己資本は半分以下になる計算だった。

E社の社長に不正はありません。領収書を切りそびれた経費、急な立替、個人の支払いを一時的に会社から。一つひとつは小さく、そのつど精算するつもりだった。それが10年積み上がっただけです。

4. 金額の大小より、増え続けているかどうか

ここが実務上いちばん重要な点です。見られているのは残高の大きさより、その残高が減る方向にあるか、増える方向にあるかです。

1,000万円あっても、返済計画があって毎期確実に減っているなら、説明ができます。この会社は問題を認識し、手を打っていると読まれる。逆に300万円でも、毎期じわじわ増えていれば、会社と個人の線引きができていない状態が今も続いていると読まれます。金額ではなく、方向です。

だから最初にやるのは、残高を一気に返すことではありません。増えるのを止めることです。ここが止まれば、残りは時間をかけて減らせます。

5. 今期から着手できる4つ

順番どおりにやると、いちばん早く終わります

私たちBEYONDは、9社の中小企業を自分たちで経営しています。会社と個人が混ざりやすい構造は、悪意ではなく規模から生まれることを、当事者として知っています。社長が個人の財布で会社の急場をしのぎ、会社の口座で個人の急場をしのぐ。中小企業では、それが機能してきた面もあります。

ただし、混ざったままで得られる信用には上限がある。金融機関に説明できない項目が決算書に載っている限り、条件の交渉は前に進みません。そしてこの作業の価値は、融資が通ることではありません。会社と個人が分離された会社は、承継のときも、M&Aのときも、社長に万一があったときも、話が単純です。残高をゼロにすることより、線を引き直すこと自体が資産になります

まずは今期の決算書を開いて、貸付金と仮払金の残高を見る。前期と比べて増えているか減っているか。それを確かめるところからで十分です。

いまの決算書から、貸付金と仮払金の残高をすぐ言えますか?

1分でできる財務体力チェック、もしくは無料ヒアリングから。会社と個人の線引きがどこで曖昧になっているかを一緒に確認します。

6. BEYONDが伴走するときの動き方

BEYONDは、論点を指摘して終わりではありません。実際に決算書から混在が消え、残高が減る方向に転じ、金融機関に説明できる状態になるところまで一緒に動きます。FLOWで伴走に入る場合、典型的にはこう進めます。

止めるのが先、返すのは後。順番を守れば、思ったより早く終わります