簿価はほぼゼロなのに、
値段が付いた機械(想定事例)
簿価はほぼゼロなので、帳簿の上では価値がありません。売っても利益は出ない、と思われがちです。
ところが帳簿の数字と、実際に付く値段は別物です。以下は想定事例です。
1. 【before】三年使っていない機械が、二台あった
従業員31名の製造業。十年前に導入した機械が二台、三年前から動いていません。
止まった理由は、受注していた品目がなくなったことでした。また同じ仕事が来るかもしれないので、処分せずに置いていました。
置いている費用は、社長の認識ではゼロでした。倉庫は自社のもので、家賃は発生していない。簿価もほぼ残っていないので、帳簿にも出てきません。
きっかけは、別の設備を入れる検討でした。置き場所を探していて、この二台が占めている面積に目が行きました。
2. 簿価と、実際に付く値段は連動しない
中古の業者に見てもらったところ、一台には値段が付き、もう一台には付かなかった。
値段が付いたのは、同じ型を使っている会社がまだ多い機械でした。付かなかったのは、特殊な加工用で買い手が限られるものでした。
帳簿の上では、どちらもほぼゼロです。簿価は過去の購入額を年数で割った残りで、いまの需要とは関係がありません。
逆のことも起きます。簿価が数百万円残っているのに、引き取り手がない設備。この場合、売れば帳簿上は損が出ますが、持ち続けても費用は出ていきます。
3. 【turn】売る順番を決めた
一度に動かすと手間が集中するので、順番を決めました。基準は三つです。
①年式で値段が下がるものを、先に出す。機械や車両は、置いている間に値段が落ちます。迷っている間に数十万円下がることがあります。
②置く費用が乗っているものを、次に出す。保守契約が続いている、保険をかけている、点検を受けている。使っていないのに毎年出ている費用があるものです。
③場所を空ける効果が大きいものを、三番目に。値段は付かなくても、空いた面積が別の用途に使えるなら価値があります。
この会社は①で一台を売り、②に該当するものがもう一台あることに気づきました。使っていない設備に、年間の保守料が出ていた。
4. 売却で動くのは、現金だけではない
売ったときに動く数字を、先に押さえておきます。入ってくる現金以外に、四つあります。
- 償却資産の申告額: 所有している資産の申告対象から外れるため、翌年度以降の負担が変わる場合がある
- 売却損益: 簿価と売却額の差が損益として出る。期の利益に影響する
- 毎年の固定費: 保守契約、保険、点検。使っていなくても出ていた分が止まる
- 場所の機会費用: 空いた面積を使えるようになる。借りている倉庫なら、縮小の交渉材料になる
このうち、社長がいちばん驚いたのは三つ目でした。使っていない機械に、年単位で保守料が出続けていた。
なお、売却および除却の会計処理と税務上の取扱い、償却資産の申告については関係法令および会計基準にもとづく定めがあり、顧問税理士および会計事務所への確認が前提です。期のどこで売るかによって影響も変わります。
5. 引き取り手がないものの始末
値段が付かなかった一台は、処分することにしました。処分には費用がかかります。現金は出ていきます。
それでも決めた理由は二つでした。場所が空くことと、毎年の点検と申告の対象から外れること。
処分の判断で迷うのは、『また同じ仕事が来るかもしれない』という点です。この会社は線を引きました。三年間一度も来ていない仕事は、来たときに外注で受ける。
持ち続ける判断もあり得ます。ただし持ち続けると決めるなら、いつまで持つかを書く。期限のない保留が、十年の放置になります。
廃棄にあたっては、廃棄物の処理に関する法令上の手続が必要になる場合があります。業者の選定も含めて確認が要ります。
三年使っていない設備は、いま何台ありますか?
1分でできる財務体力チェック、もしくは無料ヒアリングから。使っていない資産と、そこに乗っている費用を一緒に洗い出します。
6. BEYONDが伴走するときの動き方
BEYONDは、外から助言するコンサルではなく、複数の中小企業を自分たちで経営している集まりです。設備を持つ商売が社内にあるので、この棚卸しは何度もやってきました。
毎回出てくるのは、使っていない資産に費用が乗っていることです。保守、保険、点検。導入時に付けた契約が、稼働が止まった後も続いています。止めたのは機械で、契約は止めていない。
FLOWで伴走に入る場合、典型的にはこう進めます。
- 固定資産台帳を開き、現場を一周する(無料ヒアリング): 台帳にあって動いていないものに印を付ける
- 印を付けたものに乗っている費用を調べる: 保守・保険・点検の契約を一件ずつ当たる
- 値段が付くかを一度だけ聞く: 中古の業者に見積を取る。年式で落ちるものから先に
- 売る・処分する・持ち続けるを、期限付きで決める: 持ち続ける場合も、いつまでかを書く
いちばん抵抗が出るのは、社長が自分で入れた設備を処分することです。判断を否定するように感じられる。ここは数字で話すより、いまの受注で使う予定があるかどうかだけを確かめるほうが進みました。
なお、売却損益や除却の処理、償却資産の申告については顧問税理士および会計事務所に必ずご確認ください。私たちが一緒にやるのは、その前段にある、台帳と現場を突き合わせる作業です。