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#財務・資金繰り #数字・見える化 #意思決定
FINANCIAL COLUMN · 2026.08.05 · BEYOND Holdings 編集部

料率は下がったのに、負担は増える
── 納税・社保・賞与を先に取り分ける

「今年は健康保険料率が下がったらしい」──そう聞いて安心した社長がいたら、少し待ってください。
2026年3月分(4月納付分)から、協会けんぽの健康保険料率は全国平均で9.90%になりました。前年度の10.00%からの引き下げです。介護保険料率は1.62%、厚生年金保険料率は18.3%(労使折半)で据え置き。
ところが2026年4月からは、子ども・子育て支援金が医療保険料に上乗せして徴収され始めました。被用者保険の令和8年度の支援金率は0.23%、これも労使折半です。差し引きすると、料率の引き下げ分はほぼ相殺されます。
そして決定的なのはここです。料率が横ばいでも、賃金が上がれば支払う金額は増えます。率ではなく額で効いてくる。納税・社会保険・賞与は、来るかどうか分からない支出ではありません。いつ、いくら出ていくかが確定している支出です。だから、後から工面するのではなく先に取り分けます。
CONTENTS
  1. 料率の話に隠れる『額』の話 ── 2026年度の実際
  2. 確定支出は3つ ── 納税・社保・賞与
  3. 想定事例: 黒字なのに、納付の月だけ毎年苦しい会社
  4. turn: 別口座に先取りする、4つのルール
  5. 学び: 資金繰りは『予測』より『隔離』が効く
  6. BEYONDが伴走するときの動き方

1. 料率の話に隠れる『額』の話 ── 2026年度の実際

料率のニュースは分かりやすいので目に入ります。しかし会社の口座から出ていくのは率ではなく金額です。社会保険料は標準報酬月額 × 料率で決まるので、変数は二つある。片方が下がっても、もう片方が上がれば結果は増えます。

KEY NUMBER
社会保険料 = 標準報酬月額 × 料率
料率が9.90%へ下がっても、子ども・子育て支援金0.23%が上乗せされ、さらに賃上げで標準報酬月額が上がれば、支払総額は前年より増える

賃上げは、人件費が増えるという形でだけ効いてくるのではありません。社会保険料の会社負担も、同じ比率で連動して増えます。給与を3%上げれば、社会保険料の会社負担もおおむね3%増える。ここまで含めて「賃上げのコスト」です。給与総額だけを見て資金計画を立てると、毎年この分だけ足りなくなります。

2. 確定支出は3つ ── 納税・社保・賞与

資金繰りで会社を苦しめる支出には、共通の特徴があります。金額が大きく、時期が決まっていて、交渉の余地がない。この条件に当てはまるのが次の3つです。

これらは予測すべき支出ではなく、すでに確定している支出です。にもかかわらず、多くの会社が一つの口座で運転資金と混ぜて管理しています。混ぜた瞬間、通帳の残高は使えるお金に見えてしまう。ここが事故の入口です。

3. 想定事例: 黒字なのに、納付の月だけ毎年苦しい会社

※ 以下は、実際に起こりやすい状況をもとに構成した想定事例です。

SIMULATION

年商4億円・従業員25名・毎期黒字。それでも年に3回、資金が薄くなる

決算は黒字。売上も伸びている。それなのに、消費税の納付月・賞与の支給月・決算納税の月になると、毎年きまって資金が細り、そのたびに短期の借入で埋めていました。

before: 入金も支払いも口座は1つ。月末の残高を見て「今月も回った」と判断していた。納税や賞与の資金を意識するのは、請求書や納付書が届いてから。社長いわく「いつも直前で慌てるが、なんとかなってきた」。
何が起きていたか: 通帳に残っていた資金の中には、預かっているだけの消費税と、数か月後に必ず出ていく賞与の原資が混ざっていた。使えるお金だと錯覚したまま、設備の前倒し購入や在庫の積み増しに回してしまう月がある。
結果: 支払能力の問題ではなく置き場所の問題で、毎年3回、短期借入の利息を払っていた。金利が上がる局面では、この費用も年々重くなる。

この会社は資金が足りなかったのではありません。自社のお金と、預かっているお金・約束済みのお金を、同じ場所に置いていただけです。

4. turn: 別口座に先取りする、4つのルール

やることは単純です。確定支出専用の口座を1つ作り、毎月そこへ移す。それだけで、通帳の残高が意味のある数字に変わります。

先取り口座を回す4つのルール

とくに効くのが②です。人は目に見えるお金を基準に判断します。先に抜いてしまえば、残高がそのまま『使っていいお金』になる。意志の力ではなく、順番で解決する方法です。

5. 学び: 資金繰りは『予測』より『隔離』が効く

資金繰りというと、精密な予測表を作る話になりがちです。もちろん資金繰り表は必要ですが、予測の精度を上げても、混ざっている限り使ってしまいます。分かっていたのに払えない、という事故はここから起きます。

確定支出の隔離が効くのは、判断そのものを不要にするからです。毎月「これは使っていいのか」と考える必要がなくなる。考えなくてよくなった分だけ、社長の頭は本業の判断に使えます。

私たちBEYONDは、9社の中小企業を自分たちで経営しています。資金繰りの重さも、納付月の憂鬱も、自分の会社の話として引き受けている当事者です。その実感として言えるのは、資金繰りで差がつくのは予測の巧拙ではなく、置き場所を分けているかどうかだということ。分けている会社は、金利が上がっても短期借入に頼らずに済みます。分けていない会社は、黒字のまま毎年利息を払い続けます。

そして料率のニュースに戻ると、伝えたいのは一点です。率が下がったという見出しを、負担が減ったと読み替えない。額で確かめる。確かめた額を、先に別の場所へ移す。やることはこれだけです。

納税と賞与の資金、いまどこに置いていますか?

1分でできる財務体力チェック、もしくは無料ヒアリングから。確定支出を差し引いた『本当に使えるお金』がいくらかを一緒に確認します。

6. BEYONDが伴走するときの動き方

BEYONDは、口座を分けましょうと助言して終わりではありません。実際に毎月の移動が習慣として回り、納付月に慌てなくなるところまで一緒に動きます。FLOWで伴走に入る場合、典型的にはこう進めます。

確定している支出は、驚くべきものではありません。驚きに変えているのは、置き場所だけです。