40万円未満が即時に落ちる期に、
回収できたかを誰が確かめるか
小口の設備投資は、通しやすくなりました。
ところが通した投資が回収できたかを、確かめている会社はほとんどありません。
1. 通しやすくなったものほど、振り返られない
特例の対象は、常時使用する従業員数400人以下の法人に限定されました。年間の損金算入限度額300万円は変わりません。適用要件や申告の実務は顧問税理士にご確認ください。
実務上の影響は一つです。基準が40万円未満に上がったことで、取得時に全額を費用にできる範囲が広がりました。工具、測定器、パソコン、什器。これまで資産に計上していた帯が、費用処理の側に移ります。
そして、処理が軽くなった投資は決裁も軽くなります。ここに落とし穴があります。
金額の大きい投資には、たいてい検討の記録が残っています。稟議書、比較表、回収計算。一方、小口の投資は現場の判断で入り、記録が残りません。残らないので、効果を確かめることもありません。
年間300万円の枠を使い切っている会社なら、その300万円が何に使われ、何を生んだのかを誰も答えられないという状態になり得ます。
2. 何年で判断するか、の前に確かめること
設備投資の回収期間を何年で見るべきか、という問いはよく出ます。ところがこの問いに答えを出す前に、確かめることがあります。
過去に『3年で回収できます』と言って通した投資が、実際に3年で回収できたかです。
ここを確かめていない会社では、回収期間の基準を何年に置いても意味がありません。基準の妥当性を検証する材料がないからです。毎回、同じような見込みを立てて、同じように外します。
そして事後検証には、金額の大きい投資より小口の投資のほうが向いています。件数が多く、効果が出るまでの期間が短いからです。
3. 投資台帳を一枚作る
やることは単純です。過去3年に入れたものを、一枚に並べる。
固定資産台帳からは、資産計上したものが出てきます。費用処理したものは、勘定科目の明細から拾います。工具器具備品、消耗品費、修繕費のあたりに散っています。
- 取得した時期と金額: 月まで。金額は税抜きで統一する
- 何のために入れたか: 省力化・増産・更新・品質・安全のどれか
- 当時の見込み: 何がどれだけ良くなると言って決めたか。無ければ空欄にする
- いま実際にどうなっているか: 稼働しているか、使われていないか
- 回収できたと言えるか: 言える・言えない・分からない の三択
この作業で最初に出てくるのは、三行目が空欄だらけになるという事実です。当時の見込みが残っていない。それ自体が最大の発見になります。
そして四行目で、使われていない設備が出てきます。多くの会社で、必ず何件か出ます。
4. 回収を測る、三つの指標
回収したかどうかを、何で判定するか。目的ごとに指標が違います。一つの指標で全部を測ろうとすると、どれも測れません。
①省力化のために入れたもの。測るのは削減された時間です。金額に換算する前に、まず時間で測ります。誰の作業が、月に何時間減ったか。減っていなければ回収していません。
②増産のために入れたもの。測るのは増えた粗利額です。売上ではありません。稼働率が上がっても粗利の薄い仕事で埋まっていれば、回収は進みません。
③更新・品質・安全のために入れたもの。これは回収額では測れません。測るのは減った事象の件数です。故障停止、不良、手直し、事故。件数が減っていないなら、目的を達していません。
三つ目を金額で測ろうとすると、必ず無理が出ます。件数で測ると決めておくほうが、現場も納得します。
5. 振り返りの会議を、年に一度だけ置く
台帳と指標が揃ったら、見る場を作ります。年に一度で十分です。
置く時期は、次期の投資計画を立てる直前。これが要点です。振り返りと計画を離すと、振り返りが反省会になって終わります。
議題は三つに絞ります。
①回収できたと言えないものに、共通点があるか。目的の種類、金額帯、提案者。たいてい何かのパターンが出ます。
②使われていない設備をどうするか。売却、転用、処分。放置が最も高くつきます。保管場所と管理の手間がかかり続けます。
③次期の投資に、見込みを書く欄を作る。小口の投資にも、一行だけ『何がどれだけ良くなるか』を書かせる。これが翌年の振り返りの材料になります。
そして、回収期間を何年で判断するかという問いには、この振り返りを二回やってから答えを出すのが順番です。自社の実績がないまま一般的な年数を置いても、守られません。
去年入れた設備、回収できたか言えますか?
1分でできる財務体力チェック、もしくは無料ヒアリングから。過去3年の投資を並べて、回収の実績を一緒に確かめます。
6. BEYONDが伴走するときの動き方
BEYONDは、複数の中小企業を自分たちで経営している集まりです。投資の事後検証は、各社で回しています。最初にやったとき、使われていない設備が想像以上に出ました。しかもその多くが、金額の小さいものでした。
FLOWで伴走に入る場合、典型的にはこう進めます。
- 過去3年の取得を一枚に並べる(無料ヒアリング): 固定資産台帳と勘定明細の両方から拾う
- 目的ごとに指標を割り当てる: 省力化は時間、増産は粗利額、更新・品質・安全は件数
- 回収できたと言えないものの共通点を探す: 金額帯か、目的か、決め方か
- 次期の計画書に見込みの一行を足す: 小口の投資にも書かせる
税務上の取扱い、とくに特例の適用要件や申告の実務は顧問税理士に必ずご確認ください。私たちが一緒にやるのは、処理の話ではなく判断の精度を上げる作業です。通しやすくなった制度ほど、通した後を見る仕組みが要ります。