来週から控除が一段下がる
── 納税カレンダーを資金繰り表に重ねる
免税事業者からの仕入れがある会社は、この日を境に消費税の納付額が増えます。今後も段階的に下がることが決まっています。
納税の山は、こちらの意思と関係なく高くなっていきます。だから先に置いておく必要があります。
1. 10月1日から何が変わるか
インボイス制度では、適格請求書発行事業者以外からの仕入れについても、一定割合を仕入税額控除できる経過措置が置かれています。この割合が、2026年10月1日に80%から70%へ下がります。
その後も段階が続きます。2028年10月1日から50%、2030年10月1日から30%、そして2031年9月末で経過措置は終了します。当初の予定より緩やかになり、期間も延びましたが、方向は一つです。
影響を受けるのは、免税事業者からの仕入れや外注がある会社です。個人の職人、小規模な運送、賃貸の一部。金額が大きい会社ほど、控除できない部分が増えます。
なお、一の免税事業者等からの課税仕入れの合計額が年間1億円を超える部分は、経過措置の対象外とされています。適用関係は事業者ごとに異なるため、自社がどの取引でどれだけ影響を受けるかは、必ず顧問税理士にご確認ください。
2. 納税は予測ではなく、ほぼ確定している支出
資金繰りで最も読みにくいのは売上です。逆に、最も読みやすいのが納税と社会保険です。時期は制度で決まっており、金額も直近の実績からおおよそ計算できます。
それなのに、多くの会社の資金繰り表には納税が一行でしか入っていないか、入っていません。月次の入出金は細かく見ているのに、年に数回来る大きな塊が抜けている。
資金がショートするのは、売上が落ちた月ではなく、納付が重なった月です。読めるものを表に載せていないのが原因です。
3. 一枚に並べる、四つの塊
カレンダーに置くのは、次の四つです。期日と概算額の両方を書きます。
- 法人税等: 決算にもとづく納付と、中間申告がある場合の納付
- 消費税: 確定申告による納付と、中間申告の回数に応じた納付
- 社会保険料・労働保険料: 毎月の納付に加え、年度更新や算定基礎後の変動
- 固定資産税・償却資産税など: 分割納付の各期
作り方は単純です。去年の納付書と申告書を全部出してきて、月ごとに並べる。これで骨格ができます。所要は一時間ほどです。
注意したいのが消費税です。前期の納税額によって中間申告の回数が変わります。去年は年1回だったのに今年から回数が増える、ということが起こります。売上が伸びた翌期に資金が苦しくなる典型的な原因がこれです。
そして今年は、ここに前節の控除割合の変更が乗ります。免税事業者からの仕入れが多い会社は、来期の消費税の概算を去年のままにしてはいけません。
4. 資金繰り表に重ねると、見えるもの
納税カレンダーを単独で作っても、あまり意味がありません。資金繰り表と同じ一枚に載せてはじめて効きます。
重ねると、三つのことが見えます。
①いちばん重い月。納付が重なる月が必ずあります。決算月の二か月後に法人税と消費税が並び、そこに賞与や固定資産税が乗ると、一年でいちばん現金が出ていく月になります。
②その月の手前三か月。重い月そのものより、その前の三か月に何が起きるかが重要です。入金が細い月が続いていれば、そこで手を打つ必要があります。
③借入返済との重なり。返済の山と納付の山が同じ月に来ていないか。これは調整できる可能性がある項目です。
5. 重ねたあとに打てる、三つの手
山が見えたら、やることは三つに絞られます。
①先に取り分ける。重い月の金額が分かっているなら、それまでの月で按分して別に置く。これがいちばん確実で、いちばんやられていない手です。
②時期をずらせるものを探す。納付の期限は動かせませんが、設備投資や賞与の支給月、大きな仕入れの時期は動かせることがあります。重い月に自分で山を足していないかを確認します。
③足りないと分かった時点で銀行に行く。カレンダーがあれば、いつ・いくら足りないかを数字で説明できます。『なんとなく不安なので』と相談するのとは、受け取られ方がまったく違います。
そして重要なのは、このカレンダーを毎年同じ時期に更新することです。決算が確定したタイミングで来期分を引き直す。一度作って終わりにすると、中間申告の回数が変わった年に必ず外します。
来年いちばん重い納付の月は、いつですか?
1分でできる財務体力チェック、もしくは無料ヒアリングから。直近の申告書と納付書を並べて、12か月の山を一緒に置きます。
6. BEYONDが伴走するときの動き方
BEYONDは、複数の中小企業を自分たちで経営している集まりです。納付の月に慌てた経験も、先に取り分けて楽だった経験も、どちらもあります。差がついたのは、金額の大小ではなく、いつ知っていたかでした。
FLOWで伴走に入る場合、典型的にはこう進めます。
- 去年の納付書と申告書を全部並べる(無料ヒアリング): 四つの塊を12か月の横並びに置き、山の月を特定する
- 今期の変動要因を乗せる: 中間申告の回数、控除割合の変更、賃上げによる社保の増加
- 資金繰り表と同じ一枚に重ねる: 返済・賞与・設備投資との重なりを見る
- 取り分けの金額と口座を決める: 毎月いくらを、どこに置くか
なお、税額の計算・中間申告の要否・経過措置の適用関係は事業者ごとに異なります。実際の取扱いは顧問税理士に必ずご確認ください。私たちが一緒にやるのは、確定している支出を資金繰りの判断に載せるところです。読める支出を載せていない表は、読めない支出をどれだけ精緻にしても当たりません。