帳簿にある設備が、現場に無い
── 申告まで三か月
基準日は1月1日時点の所有です。年の途中で処分した資産は、持っていなければ申告の基礎から外れます。
ところが12月決算以外の会社では、ここがずれたままになります。
1. 申告は1月31日、基準日は1月1日
この二つの日付が別だというのが、実務のややこしさの出どころです。
申告するのは1月1日時点で所有している償却資産です。提出の期限が1月31日。この一か月の間に、前年の一年分を整理することになります。
三月決算の会社を考えます。決算で固定資産を見るのは四月から五月です。そこから1月1日までに八か月以上あります。
その八か月の間に処分した設備は、決算のときには台帳に載っていました。決算の作業では拾えません。
だから12月決算以外の会社では、決算とは別に、1月1日時点の所在を確かめる作業が必要になります。これをやっていない会社が多い。
2. 帳簿にあって現場に無い、が起きる理由
意図的に隠しているわけではありません。経路が三つあります。
一つめ、壊れて捨てた。現場の判断で処分し、経理に伝わっていない。金額が小さいものほど起きます。
二つめ、下取りに出した。新しい設備を入れたときに、古いものを引き取ってもらった。新しい資産の登録はされ、古い資産の除却が抜ける。
三つめ、別の場所に移した。無くなってはいませんが、台帳の所在地が古いままです。市町村をまたいで移していると、申告先の問題になります。
逆もあります。現場にあるのに台帳に無い。中古で安く買ったもの、客から譲り受けたもの。こちらも突き合わせで出てきます。
3. 突き合わせる範囲を、金額で切る
全件を見ようとすると終わりません。台帳が三百行ある会社で、全部を現場で確認するのは現実的ではない。
切り方は二つあります。
一つめ、取得価額の大きい順に上から一定数。金額の大きいものから数十行。ここが合っていれば、影響の大きい部分は押さえられます。
二つめ、取得から一定年数が経っているもの。古いものほど、処分されている確率が高い。十年を超えているものだけを抜くと、行数はかなり減ります。
この二つで抜いた行を合わせると、三百行のうち確認するのは五十行ほどになります。一日で歩けます。
残りは翌年に回していい。毎年、違う範囲を見る形にすれば数年で一周します。全部を一度にやろうとして毎年やらないより、一部を毎年やるほうが台帳は合ってきます。
4. 現物確認は、台帳を持って歩くだけ
仕組みは要りません。印刷した台帳と、記入する欄があれば終わります。
- 持ち物: 抜き出した台帳の印刷、ペン、現場の案内役が一人。写真が撮れるものがあれば足りる
- 有無: あった、無かった、分からないの三択で付ける。判断は後でやる
- 所在: あった場合、台帳の記載と場所が合っているか。違えば実際の場所を書く
- 状態: 動いているか、止まっているか。止まっているものは別の検討につながる
案内役は、経理ではなく現場の人にします。台帳の名前と現物の呼び名が違うことが多く、現場の人でないと特定できません。
分からないに付いたものは、後で現場の別の人に聞きます。その場で結論を出そうとすると、歩くのが止まります。
止まっている資産に印が付いたら、それは別の判断の材料になります。使っていない資産には保守や保険の費用が乗っていることがあり、そこは売却や処分の検討につながります。
5. 無かったものを、どう扱うか
ここから先は、自社で決められる範囲が狭くなります。
除却の会計処理、除却損の税務上の取扱い、申告にどう反映するかは関係法令および会計基準にもとづく定めがあり、顧問税理士および会計事務所への確認が前提です。
いつ処分したかが分からない資産もあります。この場合の扱いも、専門家の判断になります。自己判断で台帳から消すのは避ける領域です。
自社でやるべきことは、記録を残すことです。確認した日、確認した人、無かったという事実、分かる範囲での処分の時期。
この記録があると、専門家に渡す材料になります。無いと、何も判断できません。渡せる形にするところまでが自社の仕事です。
そして来年に向けて一つ決めます。現場で何かを処分したら、誰に伝えるかを名前で決める。この一行があるかどうかで、来年の突き合わせの量が変わります。
固定資産台帳にある設備を、最後に現場で見たのはいつですか?
1分でできる財務体力チェック、もしくは無料ヒアリングから。台帳と現場の突き合わせの範囲と順番を一緒に決めます。
6. BEYONDが伴走するときの動き方
BEYONDは、外から助言するコンサルではなく、複数の中小企業を自分たちで経営している集まりです。設備を持つ商売が社内にあるので、この突き合わせは何度もやってきました。
毎回出てくるのは、下取りの抜けです。新しい設備を入れた記録は必ず残ります。嬉しいので社内でも共有されます。古いものを引き取ってもらった記録が、どこにもない。
もう一つ多いのが、金額の小さいものの処分でした。現場の判断で捨てられ、誰も悪くないまま台帳に残ります。
やって効いたのは、確認の時期を決めたことでした。11月に歩く。申告の一か月前に始めると、専門家に相談する時間がありません。
FLOWで伴走に入る場合、典型的にはこう進めます。
- 固定資産台帳を金額順と年数順で抜き出す(無料ヒアリング): 確認する行をその場で絞ります
- 現場の案内役と一緒に歩く: 有無・所在・状態の三つだけを付けて回る
- 無かったものと、台帳に無かったものを一覧にする: 専門家に渡す形まで作る
- 来年に向けて、処分を伝える相手を名前で決める: 経路を一本作ると、翌年の量が減ります
いちばん手が止まるのは、無かったものが見つかった後です。処理の判断が自社でできないので、そこで放置されます。記録を作って専門家に渡すところまでを一つの作業として設計するほうが、最後まで進みました。
なお、申告の方式や減少した資産の記載方法は市町村によって異なります。除却の処理と申告の内容については顧問税理士および所在地の市町村の窓口に必ずご確認ください。私たちが一緒にやるのは、その前段にある、台帳と現場を突き合わせる作業です。